供託

     

1 供託とは

 供託とは,金銭,有価証券などを国家機関である供託所に提出して,その管理を委ね,最終的には供託所がその財産をある人に取得させることによって,一定の法律上の目的を達成しようとするために設けられている制度です。
 ただし,供託が認められるのは,法令(例えば,民法,商法,民事訴訟法,民事執行法等)の規定によって,供託が義務付けられている場合または供託をすることが許容されている場合に限られています。

 

 

2 供託の種類

 供託は,その機能により大別すると,次の5つがあります。

 

(1) 弁済のためにする供託(弁済供託)

(2) 担保のためにする供託(担保保証供託)
       ― 裁判上の保証供託/営業上の保証供託/税法上の 担保供託

(3) 強制執行のためにする供託(執行供託)

(4) 保管のための供託(保管供託)

(5) 没取の目的物の供託(没取供託)

 

 

3 供託所とは

 供託所は,一般的には国の機関である法務局・地方法務局またはそれらの支局も しくは法務大臣の指定する出張所がこれに当てられています。供託すべき供託所は, 供託の種類によって異なります。例えば,

 

 

(1) 弁済供託の場合
  → 債務履行地に所在する供託所

 

(2) 営業上の保証供託の場合 
  → 主たる営業所または事務所の最寄りの供託所

 

(3) 裁判上の保証供託の場合
   → 担保を立てるべきことを命じた裁判所または執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の 管轄区域内の供託所

 

(4) 執行供託の場合
   → 債務履行地の供託所

 

が,管轄供託所となります。詳しいことは,最寄りの法務局・地方法務局(供託所)にお尋ねください。

 

 

4 供託金の預入れ

1 地代・家賃の弁済供託ができる主な例

 

(1) 支払日に地代・家賃を提供したが,地代・家賃の値上げや土地・建物の明渡し要求などの理由で受領を拒否された場合(受領拒否)

 

(2) 地主・家主と争いが続いていて,あらかじめ地代・家賃の受領を拒否され,地代・家賃を提供しても受け取ってもらえないことが明らかな場合(受領拒否)

 

(3) 地主・家主等受取人が行方不明の場合(受領不能)

 

(4) 地主・家主であると称する複数の者から地代・家賃の支払請求を受け,いずれの者に支払ってよいかわからない場合または地主・家主が死亡し,その相続人が誰であるか不明の場合(債権者不確知)

供託金の預入れ

2 供託に必要なもの

 

(1) 供 託 書 ― 供託所に備えてあります。

(2) 供託通知書 ― 供託所に備えてあります。

(3) 印 鑑 ― 実印・認印のいずれでも構いません。

(4) 資格証明書 ― 供託者が会社・法人の場合,作成後3か月以内のものに限ります。

(5) 委 任 状 ― 代理人によってする場合に必要です。

(6) 供 託 金 ― 契約金額そのものですが,地代等の値上げ額で話し合いがつかないために供託する場合には相当と思われる額です。

(7) 封   筒 ― 弁済供託等通知を要するとされている場合に必要です。

(8) 郵便切手 ― 弁済供託等通知を要するとされている場合に必要です。

注) 地代・家賃を供託するときは,賃借の目的物の所在,地番,構造,種類,賃料,支払日等を記載していただきますので,賃貸借契約書等を持参すると便利です。

 

 

 

5 供託金の払渡し

 供託金の払渡請求は,還付請求と取戻請求の2種類があります。

 

1 還付請求
(1) 還付請求

 供託関係に基づく権利者すなわち被供託者からの払渡請求をいい,これにより供託関係は本来の目的を達して終了します。

還付請求

(2) 請求する際に必要なもの

ア 供託金払渡請求書 ― 供託所に備えてあります。

イ 供託通知書又は供託書正本 ― 被供託者に供託通知書が送付されている場合は,その供託通知書が必要です。(紛失等によって提出できない場合には,供託所にお尋ねください。)

ウ 反対給付があったことを証する書面 ― 反対給付の約定がある場合に必要です。

エ 実印と印鑑証明書 ― 証明書は作成後3か月以内のものに限ります。

オ 資格証明書 ― 請求者が会社・法人の場合,作成後3か月以内のものに限ります。

カ 委 任 状 ― 代理人によってする場合(印鑑はエと同じ)に必要です。

キ 変更証明書 ― 被供託者欄記載の住所,氏名がアの記載事項等と相違している場合には,住民票や戸籍抄本などが必要です。

 

2 取戻請求
(1) 取戻請求

供託後に供託原因が消滅したこと,当該供託が無効であること等による供託者からの払渡請求をいい,これにより供託関係は本来の目的を達しないまま終了します。


(2) 請求する際に必要なもの

ア 供託金払渡請求書 ― 供託所に備えてあります。

イ 供託書正本 ― 供託者が保管している場合に必要です。(紛失等によって提出できない場合には,供託所にお尋ねください。)

ウ 印鑑 ― 供託書に押した印鑑(又は実印と印鑑証明書)が必要です。

エ 資格証明書 ― 請求者が会社・法人の場合,作成後3か月以内のものに限ります。

オ 委任状 ― 代理人によってする場合(印鑑はウと同じ)に必要です。

カ 変更証明書 ― 供託者欄記載の住所,氏名がアの記載事項等と相違している場合には,住民票や戸籍抄本などが必要です。

 

6 供託書の書き方

● 一般的注意事項

(1) 供託書の太枠で囲まれた部分だけを記載してください。

(2) 供託書は,ボールペン等で複写してください(鉛筆書きは許されません)。

(3) 供託書に記載する文字は,丁寧にはっきりと書いてください。また,該当番号を○で囲む場合には,○の位置がずれないように注意してください。

(4) 金銭その他の物の数量,年月日等を記載するには「1,2,3,10」等のアラビア数字を用いなければなりません。

(5) 供託金額又は有価証券の枚数および総額面の訂正はできません。

 

【地代・家賃弁済供託の記載例】

供託金の記載

 

● 供託書記載上の注意事項
(1) 「申請の年月日」欄

供託書を現実に提出する年月日を記載します。

(2) 「供託者の住所・氏名・印」欄

地代・家賃の弁済供託の場合には,借主の住所・氏名を記載して押印します。(代理人による供託の場合は,供託者の住所・氏名の下に代理人の住所およびその資格・氏名を記載して押印します。)

(3) 「被供託者の住所・氏名」欄

債権者の住所・氏名を記載します。

(4) 「供託により消滅すべき質権又は抵当権」欄

質権または抵当権を供託官が確認できるように具体的に記載します。

(5) 「反対給付の内容」欄

供託による債務の弁済と同時履行の関係にある被供託者の給付内容を記載します。

(6) 「供託金額」欄

  供託する金額をアラビア数字を使用して記載します。金額の訂正はできません。

(7) 「法令条項」

地代・家賃の弁済供託の場合には,印刷してあります。

(8) 「供託の原因たる事実」欄の記載事項
(ア) 賃借の目的物

 土地の場合にはその所在地番,地目および地積を,建物の場合にはその所在地番,家屋番号,種類,構造および床面積など建物を特定できるように記載します。なお,土地,建物の一部の場合には,その部分が特定できるように記載します。

(イ) 賃 料

 契約で定められた賃料を記載します。なお,電気料等について,契約によって賃料と一緒に支払うことになっている場合は,備考欄にその内容を書いて一緒に供託できます。

(ウ) 支払日

 契約で定められた支払日を記載します。なお,支払日が来ていないときは供託をすることができませんが,供託ができる事由が発生した後であれば供託をすることができます。

(エ) 支払場所

 契約で貸主の住所に持参することになっている場合および特に定めていない場合には,1に○を付けます。契約で貸主が取立てに来ることになっている場合には,2に○を付けます。契約で貸主・借主の住所以外に具体的な支払場所が定められている場合には,3に○を付けてその場所を記載します。

(オ) 供託する賃料

 「いつの支払期の分」であるかを記載します。なお,既に支払期の到来している数か月分の賃料を一括供託することもできます。

(カ) 供託の事由

 支払日以前の提供による供託はできません。なお,支払日に提供がしてあれば,供託をするのは後日でも差し支えありません。

(9) 「備 考」欄の記載事項

  該当欄のない事項または該当欄に全部を記載できない事項等を記載します。

 

 

7 その他

● 供託は,手続の終了までに多少の時間を要します。

● 月末,年末は特に混雑します。


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