会社法

     

 

1. 会社法の誕生の背景と趣旨

 近年、わが国の社会経済情勢は大きく変動し、それに伴い企業を取巻く経済・経営環境も変化を余儀なくされている。その変化に対応するため平成12年以降何度か、商法改正が行われたが、今回の改正はその総仕上げといえる。

 以前から、「会社法」という法律があったわけではなく、営利を目的とする法人である株式会社・有限会社・合名会社・合資会社を規制する商法第2編と、商法特例法、有限会社法等の法律を総称して「会社法」(以下、「旧会社法」という)と呼んでいた。
 また商法の規定自体、片仮名の文語体で表記されているほか、様々な改正を繰り返した結果、必ずしも一貫性のない規定の部分も見られることとなった。
 本改正では、会社に関連する複数の法律を一つに統合して、新たに「会社法」という独立した法律が制定された。

  本法律は、平成17年7月26日公布され、平成18年5月1日から施行された。

 

2. 主要な改正点の概要

 改正された点は非常に多岐にわたっているのでここでは、要点だけを示します。
 その改正概要は、(1)有限会社の廃止、株式会社と有限会社を一つの会社類型の株式会社に統合、(2)株式会社の設立手続きの簡素化、(3)株式会社の取締役・監査役等の機関設計の多様化、(4)会計参与制度の創設である。

会社法の新旧対照表

 

旧 会社法 新 会社法

設立できる会社

株式会社
有限会社
合名会社
合資会社

株式会社
合名会社
合資会社
合同会社(日本版LLC)

最低資本金規制

株式会社 1000万円以上
有限会社 300万円以上

制限なし
*「1円会社」の設立が可能

発起設立時の払込金保管証明書

必要

銀行等の残高証明でよい

会社の機関設計

㈱: 株主総会+取締役会+監査役
㈲: 社員総会+取締役会(+監査役)

株主総会+取締役も可能
・株式譲渡制限会社では、取締役会の設置が任意

取締役・監査役の人数および任期

取締役

㈱: 3人以上、任期2年
㈲: 1人以上、任期制限なし

3人以上、任期2年が原則
・株式譲渡制限会社は1人以上で、任期は最長10年まで延長可

監査役

㈱: 1人以上、任期4年
㈲: 設置は任意、設置した場合は任期制限なし

1人以上、任期4年が原則
・株式譲渡制限会社は1人以上で、設置は任意、任期は最長10年まで延長可

会計参与
*新設制度

すべての株式会社で設置可能

株主総会召集

召集通知の発送

会日の2週間前

取締役会を置かない会社は、会日の1週間前(定款で短縮可能)

召集通知の手段

書面又は電磁的方法(Eメール等)

取締役会を置かない会社は、書面等以外の方法ても可能

収集通知の形式

会議の目的事項を記載
定時株主総会では計算書類等を添付

取締役会を置かない会社は、会議の目的事項の記載および計算書類等の添付不要

株主総会で決定できる事項

㈱: 法令や定款で決められた事項
㈲: すべての事項

取締役会を置かない会社は、すべての事項が決定できるように規制を緩和

 

(1) 有限会社の廃止して株式会社と有限会社を一つの会社類型である「株式会社」に統合

■ 有限会社の廃止
 現存の有限会社は、今回の改正により廃止されることとなり、新法の施行後では新たに有限会社を設立することができなくなった。そして、新法施行日をもって、現存の有限会社は、新法下の株式会社として存続することとなり、従来の有限会社の「定款」「社員」「持分」「出資1口」は、株式会社の「定款」「株主」「株式」「1株」と呼ぶことになった。
 ただし、下記表A欄のように、商号は、有限会社をそのまま使用できるなどの経過措置が置かれていて、そのまま存続するか、新株式会社に移行するかは選択が自由である。

 

A 有限会社としてそのまま存続する場合

B 施行日以降に新株式会社に移行する場合

手続

何もしない

定款変更等をした上で、解散および設立登記が必要

商号

有限会社のまま使ええる

株式会社に変更する

機関

取締役1人以上

最低、取締役1人以上

役員の任期

取締役、監査役とも任期制限なし

取締役2年、監査役4年
・株式譲渡制限会社は、定款により最長10まで延長可能

社員の責任

有限責任

有限責任

決算書類の公告

公告不要

公告が必要

展開

現状維持

様々な機関設計ができる。

■ 合同会社の新設
 新たな会社類型として合同会社が設けられた。
 「合同会社」(日本版LLC: リミテッド・ライアビリティ・カンパニー)は、有限責任で、役員の権限や利益配分等を自由に規定でき、取締役、監査役の設置も不要なことから、ベンチャー等の起業が容易となった。

 

(2) 株式会社の設立手続きの簡素化

■ 最低資本金規制の廃止(資本金1円以上で設立可能)
 旧会社法での株式会社1000万円、有限会社300万円以上の最低資本金規制が撤廃された。しかし、資本金制度そのものがなくなった訳ではない。

■ 商号登記の柔軟化
 類似商号登記の規定が撤廃された。ただし、すでに登記されている他の会社と同一の住所では、同一商号を登記することはできない。

■ 払込金保管証明書制度の一部廃止
 旧会社法では、株式会社の設立登記をする場合に、出資金の払込金保管証明書が必要とされていたが、新法では、発起設立の場合(募集設立の場合を除く)には、銀行等の残高証明書で足りることになった。これにより、設立日を待たなくても資金の使用が可能となった。

■ 現物(金銭以外の財産)出資の緩和
 旧会社法では、現物出資において、その価格が500万円以下で、かつ資本の5分の1以下であるときは裁判所の選任した検査役の調査又は税理士等による証明が不要とされていたが、新法では、500万円以下の場合は、これらの検査役の調査等が不要となった。

 

(3) 株式会社の取締役・監査役等の機関設計の多様化

 株式譲渡制限会社は、その機関設計において、選択肢が多様化され、会社の実情に合わせ設計できるようになった。
 公開会社は、従来の株式会社に対する規制と大きく変更はないが、迅速な意思決定を支援するための規定などが設けられた。

「会社の機関」とは、会社の取締役、取締役会、監査役、監査役会、会計参与、会計監査人、株主総会などをいい、これらの機関の組み合わせをすることを「機関設計」という。

「株式譲渡制限会社」とは、発行する全部の株式について、その譲渡につき、会社の承認が必要であると定款に定めてある株式会社をいい、主に中小企業におおい。

「公開会社」とは、株式譲渡制限会社ではない会社のことをいい、株式市場に上場してる会社のことではない。

改正法施行後の機関設計

 

株式譲渡制限会社 公開会社

取締役の人数

1人以上 3人以上

取締役会

任意 必要

代表取締役

任意 必要

議事録の作成

取締役会がなければ議事録の作成は不要

議事録作成義務あり(署名による持ち回り決議可能)

監査役

取締役会設置の場合は、必要(但し、会計参与設置の場合は、任意)

必要

会計参与

任意 任意

 〈機関設計の柔軟化〉   

 

非公開会社

公開会社

非大会社

大会社

非大会社

大会社

①取締役のみ

×

×

×

②取締役+監査役

×

×

×

③取締役+監査役+会計監査人

×

×

④取締役会+会計参与

×

×

×

⑤取締役会+監査役

×

×

⑥取締役会+監査役+会計監査人

×

⑦取締役会+監査役会

×

×

⑧取締役会+監査役会+会計監査人

⑨取締役会+委員会+執行役+会計監査人

*④の場合を除き、任意に会計参与を設置できる。

 

(4) 会計参与制度の創設

■ 会計参与の意義と目的
 中小企業等における、決算書の信頼性を担保するために会計参与制度が設けられた。
 「会計参与」は、株式会社の定款で設置することを定めることができる。

「会計参与」とは、株主総会で選任され、会計に関する専門的知識を有する者(公認会計士、税理士)として取締役、執行役と共同して計算書類を作成するとともに、当該計算書類を取締役とは別に保存し、株主・会社債権者に対して開示すること等をその職務とする会社の機関をいう。

 

(5) その他の改正事項

■ 株券については、原則不発行となった。
■ 中小企業の会計に関する指針が公表された。
■ 株式会社の純資産が300万円を下回る場合には、剰余金の分配はできない。

 

3. 新会社法施行後における取引の注意点

 新会社法施行にともない、これらの会社と取引を行う場合に、以下の事項について注意する必要がある。

■ 株式会社の役員の任期が変更になった
 旧会社法では、取締役の任期が2年以内であったが、新法では、株式譲渡制限会社の場合は定款で最長10年以内に定めることができることになった。したがって、定款で役員の任期を確認し、権限の有無を調査、確認すること。

■ 取締役会の設置がない株式会社の場合、取締役会議事録の作成が不要となった
 新法では、取締役会の設置がない株式会社の場合、重要事項について議事録の作成が不要となった。したがって、会社と取締役との利益の相反する取引については、議事録が不要の場合であっても後日疑義を生じないように議事録に代わる疎明資料を確認すること。

■ 同一市区町村内で同一法人名での商号登記が可能となった
 新法では、類似商号規制が撤廃されたため、同一市区町村内において同一商号の登記が可能となった(同一住所では同一商号の登記はできない)。したがって、真の所有者の調査における住所・商号の確認は、商号登記簿謄本等と現地調査との照合をすること。

 

 

 

 



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